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ペシャワール会について [人]

アフガニスタンで亡くなった伊藤さんへの追悼の気持ちがあり、
「医者井戸を掘る」を読みました。
日付変わって9月13日0時15分よりBS2にてNGOについての
番組があるとのこと。

伊藤さんを「立派だった」という言葉で葬り去ることはたやすい
けど、彼が何に共鳴したのか、何を目指していたのかを辿ること
で追悼に代えたいと思います。

ペシャワール会の概要はwikipedia、公式サイトを参照してくだ
さい。
この本を読んで「壊れた国 壊れたモノ 壊れた心」という講演録
の木辺弘児氏の記事の以下の抜粋を思い出しました。
以下抜粋(再掲)
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今回の地震も、・・・・・統計データだけで表せられるものでは
ない。
ヘリコプターからのテレビ映像だけに存在するのでもない。
むしろ逆に極めてローカルな、路地裏のどぶ板を這う虫だけが目
撃するような、一人の老人の死とか、それを助けようと走ってい
く子供とか、そんな細部の一齣(ひとこま)にこそ、あの地震の実
態が含まれている。
その細部が逆転して世界・人間の全てを覆う。
・・・・・
ショッキングなヘリコプター映像は、上空から見下ろしている鳥
の視点です。
その目は世の中を概観して、どこにどういう問題があって、それ
をどう解決すればいいかを合理的に考えようとします。
事の大小、優先順位、予算配分などを考える政治、行政の目です。
統計的一般論を信じ、科学技術を信じる目でもあります。
・・・・・
しかし皆さんもご承知のように、この二、三百年、鳥瞰的視点で
進んできた人類文明が、今、明らかに行き詰っていますね。
このまま鳥瞰的視点だけでやっていくと、回りまわって全部が駄
目になるのではないか。
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2000年の旱魃時にアフガン人が必要としたものは今日飲める
水、そして明日枯れるかも知れない井戸を自力で掘り返す技術と
道具でした。

アフガン侵攻後のPMS会の活動は別の著作を読む必要がありま
すが、緊急対策的だった50mほどの浅井戸では旱魃の根本対策
とは言えず、「上総掘り」という日本の伝統的深井戸掘り工法の
の現地定着と、農業生産性向上という、根本対策に出ていたのだ
と思われます。
プロジェクトが具体的成果を挙げ、今後水平的に活動地域を広げ
る途上であっただけに伊藤さん、ご家族、現地の人々、PMSの
無念さはいかばかりか。
ご冥福をお祈りし、世界のNGOの活動が緩むことなきよう願い
ます。
また「施し支援」ではなく「自力再生能力の醸成を支援」という
PMSの活動の趣旨に強く賛同します。
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「現地での活動は、日本人が主体になってやらなければならない。
」かつて中村医師が何度も言った言葉だが、現地で実際に動いて
みてこの意味が本当に良く分かった。
現地で活動する国連を含めたほかのNGOを見てみると、必ずア
フガン人の代表者が取り仕切っており、外国人の仕事はその報告
を処理しているだけであった。
仕事の関係上、駐在するスタッフに会うことが多かったが、彼ら
は大まかな活動は把握しているものの、スタッフ一人一人の性格
や、村々の位置やそこの長老の名前、物の質や値段など、活動を
進める上で知っておかなければならない事に注意を払っている様
子はなかった。
このような現地人主体で進められている欧米系NGOで、100パ
ーセントその能力を発揮している所はまず無かった。
オフィスや車等の設備は立派でも、作業内容は意欲が低いせいで
遅々として進まず、権力を持った現地責任者が彼の都合で仕事を
優先するため、賄賂まがいの八百長が茶飯事になり、現地住民に
還元される援助というのはごく僅かというのが現状である。
P276より(蓮岡修氏)
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まるで日本の行政や民間企業の丸投げ体質批判を聞くようです。

PMSが現地で果たした役割は
1.組織を作り「アフガン人による自力復興」という動機付けを
  行う
2.現地の伝統的技術に最小限の改良を加え自力再生能力を醸成

なぜ組織を作り動機付けを行う必要があったのか。
アフガニスタン人によって支援組織は出来なかったのかと。
再び蓮岡氏の言葉を借ります。
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アフガニスタン特有の血族同士の敵対関係が、例えば涸れ井戸の
再生等の共同作業を円滑に進められない理由のひとつになってい
て、更に事態を悪化させていた。
まず人種があり、氏族があり、次に出身があり、村、苗字、血縁
という風に関係は細分化されていくが、それが末端に行くほど結
束は強く固いものになる。
氏族間で争いをするほどであるから最小単位に近い「村」では、
今でも周りを城壁で囲み互いに他の村を常に威嚇している状態で
ある。
今でもハダル(※)が当然のように実施されるこの社会の人々には
共同作業も理解し難いものであった。
(※復讐の掟、パシュトゥーン人の慣習法)
P236より(蓮岡修氏)
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アフガン社会に矛盾しても、また流されてもプロジェクトは空中
分解してしまう。
難しいところです。

2.の現地の伝統的技術に最小限の改良を加え自力再生能力を醸
成は従来、NGOは請負業者に井戸掘り作業を任せていたのです
が、彼らは日本円で当時250万円相当のボーリング機械を使い、
平均工期は4ヶ月。
井戸から水が出るのを住民はただ指をくわえて見ている他なく、
掘っては枯れを繰り返した旱魃の現状にはそぐいません。
技術を習得しようにも現金収入がほぼゼロの現地住民にはボーリ
ング機械など買えるはずもない。
PMSでは現地の伝統的な井戸掘り工法に単純な改良を加え作業
終了後は道具類一式を現地に残しています。

技術的な改良点は以下の通り
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・井戸底の土砂や岩を引き上げる道具として伝統的な「チャルハ」という道具
  木製→鉄製に変更(現地で溶接加工)
  回転軸に自動車用の車軸を採用
  回転部分にボールベアリングを導入し摩擦低減
 滑車を噛ませることで巨岩の引上げも可能に
・井戸枠
  コンクリート製から鉄筋コンクリート製に変更
  速乾させず1週間程度時間を掛けて乾かす
  (乾燥のため放置すれば1日で乾くが、脆いため)
・井戸側面の岩石層にコンクリートを塗りこめて安全性向上
・井戸掘りノミを鉄製から鋼製に変更
  (旧ソ連戦車のキャタピラ部品を加工)

この他、作業手順についても落下物防止、酸欠対策など改良して
いる。
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